午前の国技館
 
絵と文 米津福祐
2003年2月22日号

 ドスッ、ブチ、バシッ ビシッパチ…なんの音か、わかるだろうか。相撲の音だ。広い両国国技館に入場者十数名の午前九時半。
 前相撲が終り、序の口の取り組みが続いている。時折身内らしい「○○チャン、ガンバレ」の声が、ガランとした場内にひびく。
 今日は総勢力士約三百五十名の一月場所見物に来ている。
 前相撲であろうと序の口であろうと、見習呼び出し行司も、一戦一戦に生活がかかる真剣勝負。その姿を息をのみ、熱い視線で見まもる親がいて兄弟友人恋人がいる。同じ若者でも野球サッカー等と一寸ちがう雰囲気だ。
 先日貴乃花引退。22歳で横綱の頂点を極め、22回の優勝、更に功労金一億三千万円。満身創痍どころか、満身笑みの引退ではないか。
 角界の名門に生まれ兄弟で横綱を張れたなんて、恵まれた人だ。目の前の若い力士達とは全く違う。花道の奥をのぞくと、取り組みを待つ序の口力士が、今日の一番の重圧をはねのける様に、無邪気に隣の力士とフザケあっている。無理もない。青年というより少年の俤(おもかげ)
の残る連中だ。写生しながら負けの多い我青春我人生と重ねあわせ、健気に相撲に懸ける若者の潔さに心から声援をおくるばかり。
 負角力其子の親も見て居るか 一茶

 
 
Copyright (C) 2002 SHUKAN-UEDA All Rights Reserved.