キャンプ代を係のイギリス人女性に渡してきた妻が、「あの女性はナンなの!」とプリプリ怒る。彼女は大げさな態度を交え、あと10日も泊まるのか、カルネは大問題だ、などと同僚のアメリカ人女性に知ったかぶりの説明をしたという。妻はカチンときて、「こんなの大問題じゃないわよ。14年間110ヵ国を旅したら問題は起きるわ」。すると彼女は反り返って、「14年も…」と呆れたそうだ。僕は頷いて聞きながら、女同士の会話が妙に可笑しかった。
2ヵ月間をカルネ交渉に明け暮れ、やっとインドが近づいた矢先、クラブ・パキスタンが僕の車の保証金4000ドルは少ないと、1万5000ドルを請求してきた。これには呆れ、馬鹿馬鹿しくなって2ヵ月にわたった交渉を打ち切った。
クロは最後の肉を食べ、スープの骨まで平らげた。翌朝、うつろな目をしたクロが突然ゲップをして、ひどい下痢になった。腹をさすり正露丸を飲ませてやると、効き目は抜群だった。
クロを初めて車内に招くと、首を傾げて不思議そうに見回し、クルクルと喉を鳴らして僕の横に寝た。
出発だ。頭をなでて高く持ち上げ、「元気に生きていけよ!」と声をかけた。僕らが旅立つのを感じたか、いつまでも見送っていた。
その後僕らは、1999年からのインドの旅を再び同じコースでたどった。
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