歌集『山に向く書架』上梓
沓掛喜久男さん(85歳)

「歌壇」受賞作や掲載作を初の歌集に
坂城町の書店主務めながら作歌

書けないがドイツの孫はオレと言ふ年に一度の帰郷なれども≠ルか、ドイツで暮らすお孫さんも度々登場。非売品ですが、希望者は山根屋書店TEL0268-82-2015へ。

2018年10月20日号

  

 坂城町の山根屋書店主人の沓掛喜久男さんは古希を機に作歌を始め、信毎歌壇や朝日歌壇に投稿。代表作を集めた初の歌集『山に向く書架』を、先ごろ刊行しました。

 上田松尾高校卒業後に家業を継いだ沓掛さんは、信州美術会会員として絵画制作も続け、その歌は鮮やかな映像描写や色彩感に富みます。

 03年の皮剥けば濃い紫に震えいる葡萄を巨峰と呼ぶに馴染めず≠ヘ、瑞々しいブドウの姿を髣髴とさせ、信毎歌壇期間賞に。このほか卵やナスなどへの独自の造形的賛歌も歌いこんでいます。

特攻機は中学校に翼を振り太郎山烏帽子岳を回りてゆきぬ≠ヘ、旧制上田中学1年だった終戦間近の夏、上田飛行場を飛び立った特攻機を歌った一首。「複葉機が途中まで並んで飛び、ああ、見送っていると思った」と沓掛さん。

 若き日の戦争の記憶は繰り返し歌われ、3年前の憲法70年の年の朝日新聞掲載歌永久とは七十年なるかぐらつきし憲法九条祈るごと読む≠ヘ、朝日歌壇賞に選ばれて大きく取り上げられました。


 



 
 
 
 
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